シュガーレスキス
「……」

 首に残ったキスマーク。
 聡彦にすらこんな強いキスはされた事が無い。
 こんなの見られたら、絶対言い訳できない。何もなかったんだって言っても……聡彦は完全に私の浮気を信じるに違いない。

 私はどうにかキスマークがごまかせないか色々考えた。
 蚊に刺されたって言おうか。
 でも内出血みたいになってるし……虫刺されという言い訳は無理だ。
 じゃあ、自分で首をひっかいたとか……そういうシチュエーションも不自然だ。

 オロオロとしている間に、外からバタバタと走る足音が聞こえて、鍵を閉めてなかったドアがバンッと開いた。

「菜恵!」

 肩で息をしながら汗だくになって立つ聡彦の姿。
 私が浮気宣言なんかしたから……慌てて駆けつけたのが分かった。
 でも、今彼の傍に寄ったらこのキスマークがバレてしまう。

「聡彦……今日は部屋に上がらないで。このまま帰ってくれない?」

 キッチンから動かず、私は彼にそう言った。
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