あの夏の季節が僕に未来をくれた
目が覚めた時、一番最初に目に飛び込んできたのは母だった。


泣きそうな顔でじっと見つめて、俺の意識が戻ったのを確認すると名前を呼びながら抱きついてきた。


周りを見渡すと担任や友達や兄貴もいてくれたんだとわかり、母親に抱きつかれている自分が少しだけ恥ずかしくなった。


だけどしっかりと俺を抱き締める母の温もりに安心した俺は、恥ずかしさを押し込めてされるがままになる。


小学生なんざまだまだ母が恋しい年齢なのだから当たり前なんだけれど。


母がここまでわざわざ迎えに来てくれたんだと気付いたのは、みんなと別れて母と二人で電車で帰る時だった。


この時の優しく温かい母の表情を俺はずっと忘れないだろうと思っていた。


この先もずっと母を心配させることになるなんて思ってもみなかったから……


考えてみれば俺は親不孝な息子だったと思う。


なんの恩返しも出来ないまま、死んでしまったんだから……


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