あの夏の季節が僕に未来をくれた
俺はいろんなことを頭で整理して、ようやく納得すると、目の前の先生の顔を見つめた。


俺が気がつく前の状況を、彼女は知っているかもしれなかったから。


(あれ?なんか目が赤くないか?)


よく見ると先生の顔が泣き腫らしたように赤くなっている。


(もしかして、俺がなんかしたのかな?)


心配して彼女を覗きに込むように見ると、彼女は動揺したように目を逸らした。


「あの……俺、先生に何かしましたか?」


とりあえずもし何かしたのなら謝らなきゃならない。


先生は唇を噛み締めて目をギュッと瞑った後、何かを吹っ切るようにこちらを見た。


その顔はもうすっかり先生の顔になっていて、俺に優しく微笑む余裕まであった。


「何にもしてないわよ?

座って?何か相談があるんでしょ?」


自分も机の椅子に座ると、俺には丸椅子を勧めてくる。


(相談があるって先生に言ったのかな?俺……)


おずおずと勧められた椅子に座りながら、このことを話すかどうか考えた。


だいたい今まではよく覚えてないくらいで済んでたから、佐伯にだって話してない。


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