あの夏の季節が僕に未来をくれた
「それ……いつの話?」


まったく心当たりがない出来事に少しだけ動揺しながら、そう聞いてみる。


「お父さんと三人で進路について話し合ったことがあったでしょう?

あの日の前の晩、進路のことで相談があるって言われたの……

進学するとは言わなかったけど、もしそうならどうする?みたいに聞かれたわ」


あの時……感じた違和感はこれだったんだ。


あの日の朝、母に進路について話そうと言われて、俺は何故母が急にそんなことを言い出したのか、不思議で仕方なかった。


前日の夜に俺がそう言ったんだとしたら、母の言葉にも納得がいく。


だけど……


問題はそこじゃない。


その事を俺がまったく覚えていないということだ。


自分じゃない自分が、だけど俺の意思に添うように行動していることに愕然とする。


無意識下で自分の欲求を晴らすべく、もう一人の自分は行動を起こしている。


一度目は佐伯と友達になれた。


二度目は進路についてなかなか言えなかったのに、母に促されて伝えることが出来た。


あの時は父に失望し、成功とは言えなかったけど。


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