あの夏の季節が僕に未来をくれた
だけど次の日には佐伯に話を聞いてもらって……


ちょっと待てよ?


よくよく考えてみれば、あの時の佐伯は俺がまだ話さないうちから、何もかも知ってるような素振りだった。


しかも誘ってきたのも佐伯自身だ。


母の話が本当だとしたら、あの日佐伯にも同じことが起きていたんだろうか?


事前にもう一人の俺が、佐伯に話があるって伝えていたとしたら……


「母さん!さっき心当たりがあるって言ってたよね?

それってどういう意味?」


俺はこの時、母の口から出る言葉を、まったく予想していなかった。


ただ、手がかりになることなら教えてほしい……


そんな一心で問いかけただけ。


自分の奥深くに眠る欲求を叶えるために出てきた別の人格。


もしかしたら夢遊病ではなくて二重人格とか言うやつじゃないかと。


この時の俺はまだそんな風に思っていたんだ。


精神的な病気だという可能性は、弟も患っていたのだから、高いはずだって……


母は静かに仏壇の方を見つめた。


そしてそのまま遺影を見つめながら、そっと口を開いた。


< 187 / 248 >

この作品をシェア

pagetop