あの夏の季節が僕に未来をくれた
自ら命を絶った俺は、その瞬間……楽になれたと思った。


残されたものの悲しみなんて何も考えずに、苦しみから解放されたんだって。


だから後悔なんてしてないってずっと思ってた。


みんなが俺を思って泣いたり悲しんだりしてくれるのを見て。


心のどこかで、そこに自分の存在価値があるような気がしてた。


もしかしたら……


生きてるより死んだ方が、みんなの記憶により濃く残ると思っていたのかもしれない。


こんな病気を抱えた体で生きて周りに迷惑をかけるより、死んで思い出になった方がみんなのためにもいいんだって。


本気で思ってた……


きっと神様は、課せられた人生を全うせずに、自ら放棄したことに罰を与えてる。


ちゃんと後悔しなさいって。


死んだって楽にはなれないんだよって。


それは俺にとって一番の辛い罰。


だって放棄してしまった人生は、もう取り戻せない。


捨ててしまった体も、もう元には戻らないんだから。


人間はいつか死んでいくもので。


誕生した瞬間から、それはゴールとして必ず先にあるものだ。


だからリタイヤは許されない。


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