あの夏の季節が僕に未来をくれた
生きていれば経験するはずだった辛いことも苦しいことも。


嬉しいことも楽しいことも。


まるごと全部なかったことにした俺に、最後の試練を与えてる。


彼女をあんなに泣かせたことも。


母さんに寂しい思いをさせたことも。


父さんの失望ぶりも。


そして兄貴の、俺への渇望も。


全て受け止めて後悔しなさいって。


そう言われてるような気がしたんだ。


死ぬって選択は自分に委ねられているものじゃなかった。


それは神様が決めること。


人間はその決められたリミットの中で、いろんな経験をして成長していく。


この世に生まれ落ちた瞬間から、それは決められていて。


途中放棄すればその魂はもう成長しない。


俺は俺の成長を自ら止めて、この世に生まれてきた意味をなかったことにしてしまった。


この先、すみれちゃんや兄貴がどんどん成長していっても、俺はここで止まったまま、これから先追い付くことはもうない。


それがどんなに怖くて虚しいことなのかを知らしめられて。


俺はようやく自分で自分を殺したことを激しく後悔した。


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