あの夏の季節が僕に未来をくれた
やがてその存在さえ消えてなくなり。


最後まで覚えていたのは俺とそっくりな顔をした兄貴の存在だった。


懐かしいその顔が、また歪んで見えなくなる。


兄貴の存在さえもだんだん薄れていって……


その記憶が完全に失った時。


俺は自分が誰なのかもわからなくなった。


ずうっと前からここにいたような気さえしてくる。


でも心地よい空間に、そんなことはどうでもよくなった。


温かくて優しい闇に包まれながら。


俺はずっと以前にもこんな場所にいたような気持ちになった。


無の空間と溶け合い、交わり……


そのうち俺自身がこの闇という存在なんじゃないかと思うようになる。


長い長い時間をかけて、俺はこの闇と共にいた。


どのくらいの年月が過ぎたのかもわからないくらいの時間。


ゆらゆらゆらゆら……


不思議な感覚。


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