あの夏の季節が僕に未来をくれた
「そうだったんですか……

俺も、毎年命日にはここに来てたんですけど、今まで会わなかったの不思議ですね?」


俺の言葉を聞いて先生は困ったような気まずそうな顔で俺を見た。


それから観念したように口を開く。


「わざと……

誰にも会わないように、今までは午後に来てたから……」


ああ、そうかと俺は思った。


墓参りは本来、午前中にするものらしいから、身内が来る可能性の少ない午後を選んで足を運んでくれてたんだろう。


うちの両親は敢えて命日には墓参りには来ない。


俺が1人で行くことを知っているからなのかは、よくわからないけれど。


だいたい春と秋のお彼岸にだけ足を運ぶ。


だから余計に先生が来ていたことには気付かなかったのかもしれない。


「じゃあ、今年はなんで?」


疑問に思ってそう聞くと、先生はにっこり笑って答えた。


「もういいかなって思ったの……

誰かに会っても、私はもう大丈夫って証を、今年は連れてきてるから」


そう言いながら移した視線の先には、さっきの男の子がいた。


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