あの夏の季節が僕に未来をくれた
「でも、最初の試験……
ほとんど書けないまま発作が起きちゃったし……

落ちててもおかしくないじゃん

そしたら先生に報告も出来ないし」


こうなったらそれを逆手にとって、可哀想な生徒を演じる。


今にも泣き出しそうな顔で見つめると、彼女は観念したように静かに笑った。


「わかった、だけど生徒に連絡先教えるわけにはいかないから

ん~と、じゃあ手紙ちょうだい?

学校宛に送ってくれれば届くと思うから」


やっぱ携帯番号は教えてくれないか……


だけど手紙って……


「だったらメールアドレスでよくないですか?」


俺の提案にキョトンとした顔でしばらく黙った後、彼女はクシャッと顔を崩して恥ずかしそうに笑った。


「そうだね?

今時手紙ってねぇ?

わかった、アドレスなら教えてあげる」


赤外線だと情報が全部伝わってしまうと思ったのか、それとも試験には携帯を持ってきてないと思われたのか、彼女はメモ用紙にササッと自分のアドレスを書いて、俺に渡してくれた。


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