あの夏の季節が僕に未来をくれた



シトシトと降り続く雨の中、弟の通夜が始まる。


あいつの人柄を示すように続いた、人、人、人。


俺が死んだところでこんなに参列してくれる人がいるんだろうかと思えるほど、見事な人数だった。


小中学校の友人はもちろん、あまり行くことの出来なかった高校のクラスメイトやバスケ部の仲間まで来てくれたことに驚く。


あいつがどれだけ人気があったのか今更ながらに思い知らされた。


あいつは死んでもなお、みんなの記憶に色濃く残り、生きている俺を嫉妬させる。


悲しくなかったわけじゃないけど、あいつがいなくなった今、今度は俺が両親にも友達にも愛される番だと心のどこかで思ってた。


だけどそれは許されることなく、死んだ者は更に美化されていく。


俺の居場所は今も昔もどこにもなかった。


だから彼女には俺という存在を知らしめてやりたかった。


あいつが勝手に置いていった唯一の心残りに俺を愛してもらえたら、自分の居場所が見つかるような気がしたんだ。


「先生?今、いいかな?」


俺がようやく保健室に足を踏み入れることが出来たのは、弟が死んで半年が経った高三の春だった。


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