あの夏の季節が僕に未来をくれた
「あ……うん、大丈夫」


俺の顔を見ると、一瞬驚いたような顔をして、それからすぐに落胆した表情を見せる。


もう知ってるよな……?


散々、通夜だ葬式だって休んじまったし……


担任から聞いていたっておかしくない。


「あのさ、弟のこと……もう聞いたよね?」


俺がそう尋ねると、彼女はピクッと体を強張らせた。


顔色もみるみる悪くなっていく。


俺はそれでも言わずにはいられない。


「弟……自殺したんだ……

マンションの踊り場から飛び降りて……

即死だったって……」


酷だとは思ったけれど、真実を伝えたかった。


弟はあんたを置いて自ら命を絶ったんだとわからせたかった。


もし、まだ弟を思ってるなら諦めさせたかったのかもしれない。


例え、諦めたって俺の方を向くとは限らないのに……


それでも俺は諦められなかった。


同じ顔なんだから、俺でいいじゃないかって思ってた。


逆に同じ顔だから辛いんだということなど、何も考えずに……


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