あの夏の季節が僕に未来をくれた
生きてさえいてくれれば、お前の兄という居場所がささやかながらに与えられていたのに。


今の俺はそれさえも失って宙ぶらりんなままだ。


たまに俺を見つめてくる瞳も、俺を通して皆がお前を見てる。


暗い暗い闇の中に突き落とされたように、俺は自分がどんなやつだったのかも忘れそうになる。


誰か教えてくれ……俺はいったい誰なんだ!


急に吐き気が襲ってくる。


廊下でうずくまりながら、このまま死んでしまいたいと思った。


そうだ……お前じゃなく俺が死ねば良かったんだ……


だけど……今更、俺まで死ぬわけにいかないじゃないか……


いくらいらない俺でも、俺の顔を見てお前を思い出している両親を、これ以上苦しませるわけにもいかない。


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