あの夏の季節が僕に未来をくれた
「出てって!」


強張った顔で、強めにそう言った彼女に、俺は自分が拒否されたような気持ちになって悲しくなる。


俯いてしょんぼりする俺を見て可哀想になったのか、彼女が今度は優しい口調で話しかけてきた。


「それだけ元気ならもう大丈夫よね?

冗談はその辺にして、早く帰りなさい」


優しげなその言葉には、有無を言わさぬ勢いがある。


俺はこれ以上彼女を怒らせたくなくて、仕方なく退散することにした。


もう二度と会ってくれないかもしれないな……


メールももう返信してくれないかもしれない。


自分のやってしまったことが、彼女を失うかもしれない事実に、俺はなんとも言えない焦燥感に包まれる。


出ていこうとしていた足を止めて、保健室の扉に手をかけながら、もう会うこともないかもしれない彼女を目に焼き付けておきたくて、俺は後ろを振り返ろうとした。


< 46 / 248 >

この作品をシェア

pagetop