あの夏の季節が僕に未来をくれた
何のお返しも出来ないまま……


俺は最悪な形で彼女を裏切ってしまったから。


だから余計にそう思うのかもしれない。


彼女がいれば病気を克服できるかもしれない、なんて思ったことは確かにあった。


だけど自分の気持ちとは裏腹に、体は言うことを聞いてはくれなかったんだ……


気付くとベッドの上から空を見ていることが多くなった。


あの向こうに飛んでいけたらどんなに楽なんだろうって。


マンションの高層階から見える空は、他になんの障害物もなくて、すごく気持ちが良さそうに見えたから……


ガンガンする頭の痛みに耐えながら……重い体を引きずりながら……


こっちにいたって治ることがないならと、青空に浮かぶ雲が俺を誘惑する。


きっと母は泣くだろう。


すみれちゃんは絶望するかもしれない。


兄貴は……少しだけホッとするのかもしれないな……


俺がいなくなれば、兄貴はようやく今まで押さえていた気持ちを……


我慢していた欲望を……


素直に出せるのかもしれないから。


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