麗しの彼を押し倒すとき。
「……なっ…」
「何してんの?」
先ほどよりも赤みの増した唇で、彼はまた問いかける。
私はというと、自分の腕の間と足の間で彼を組み敷いてしまっているこの状況に、思考回路が完全に停止していた。
自分の鼓動を体で感じていると、心臓が狂ってしまったのかと心配になる。
「こんなとこで何してんの?」
彼に馬乗りになり、派手に床へと押し倒してしまっている私に、ピッタリの言葉が届く。
この状況をどうにかしないと。
そう思うのに、予期せぬことが起きたせいで身体が固まって動かない。
窓から差しこんだ光が彼のワイシャツの隙間から見える肌を照らす。
きめ細かくて、透き通るように白い肌。
くらり、何だか目眩がした。
こんな状況、生まれて此の方一度もない。
だからどうやって回避したら良いのかも分からない。
なのにこうも余裕の無い私をまだ追い詰めようというのか。
彼は私の腰にするりと腕を回すと、そのままぐっと自分の方へ引き寄せた。