ヤンヤンデレデレ
幸せそうな顔は恐らく、先生から初めて貰った五円チョコの味も思い出しているのだろう。
“誉が、初めて食べたお菓子”。
「……」
その“意味”を知ると瑞希は毎回泣きたくなる。
――俺のように、記憶なんか残らない時に捨てられていれば。
知らずと誉の手を強く握る。悲しい気持ちを紛らすために「おいしい?」と聞こうと思えば――答えは既に口の中にあった。
背の高い自分の首に手を回し、背伸びする誉。背を丸めればすぐに彼女の唇と合わさる距離となる。
いつもと変わらない動作。ただ今回は、口にころりと甘い味が残った。
「すっごい美味しいですから、瑞希さんにも。瑞希さんも、チョコ好きですものね」
照れたように笑う誉の口にチョコはない。