鐘つき聖堂の魔女


「リーシャ、ちょうど良かった。ごはんができたから座って」

ライルは二人分の皿を持ってリーシャをテーブルに促す。

自分の家なのにまるで客人の様な気分だと思いながらリーシャは椅子に座る。

以前ここに住んでいた人が二人暮らしだったのか、椅子は二つある。

テーブルも一人で使うにはやや広かったが、二人で使うにはぴったりだった。

椅子に座ったリーシャの前に皿が置かれる。

皿には色鮮やかなサラダにふわふわのオムレツ、そしてこんがりと焼き上がったパンがワンプレートにまとめられていた。



「すごい…」

「すごいってこれが?」

ライルは驚いた顔をするが、料理が出来ないリーシャにとっては感動するに足りる朝食だった。

ハーバー夫妻の作るお店の料理とは違うけど、素人ながらに見た目もバランスも良いと分かる。



「台所に卵があったからオムレツにして、パンは昨日店からもらったものを焼いただけなんだが」

目の前に置かれた皿をキラキラとした目で見つめるリーシャにライルは困ったように笑う。

「はい」と最後に差し出されたコップの中には温かいミルク。

ライルはレットのことも忘れておらず、床に置かれた銀の皿にはおそらく手作りであろう餌が入っていた。

レットはライルが置いた皿を警戒していたものの、一口食べたそれが余りに美味しかったのかガツガツと貪る様に食べ始めた。



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