鐘つき聖堂の魔女


しっかりと握り返してきたライルの手に引かれ、リーシャはライルの背にぴたりと引き寄せられる。

ドキリと小さく跳ねた心臓をやすめる間もなく歩き出したライルに慌ててついていくリーシャ。

人前で手をつなぐことに抵抗を覚えたが、歩き出すとすぐに人の波にもまれていたのが嘘のように歩きやすくなったことを実感する。

余裕ができたリーシャはライルに手を引かれながら市場を見渡す。

普段は人目を避けるため大通りは通らず、裏路地を歩くことが多く、こんなにもゆっくり大通りを歩く日が来るとは思っていなかった。




「ライル、あの白い粉はなに?お砂糖?お塩?」

「あぁ、あれは砂糖でも塩でもないよ」

クイクイと服を引っ張られて振り返ったライルはリーシャが指さした先あった麻袋を見て小さく笑う。

そしてライルはその白い粉が売られている店先までリーシャを連れて行った。



「これはね、セモリナ粉っていうんだ」

「セモリナ粉?」

「うん、そう。小麦粉の一種でこれからパスタやパンやお菓子もできるんだよ」

「お菓子も!?どんなお菓子が作れるの?」

一瞬にして瞳を光らせるリーシャにライルは苦笑を漏らす。



「定番はプディングやクッキーかな。プディングはふわふわで口に入れたら蕩けるくらい柔らかいんだ。食べてみたい?」

ライルの問いかけにリーシャは勢いよく首を縦に振る。

珍しく興奮した様子のリーシャにライルは微笑み、セモリア粉を一袋買った。


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