雪解けの水に潜む、紅



歌うタイミングはもう適当。
私に合わせてメロディーが鳴るって感じ。

それでもディモンドは気に入ってくれたみたいで、寝顔がいつもより穏やかに見えた。

歌い終わると、羊皮紙の文字が消えてしまった。
最初みたいな唯の紙と化してしまったので、仕方なくポシェットに仕舞う。
静かな寝息を立てるディモンドの傍に座って寄りかかる。
硬い鱗の枕はあまり心地良いとは言えなかったけれど、その温もりが母さまの腕に抱かれているようだった。
暫くそこにいるとドタバタという慌てた足音が近づき私の前に一人の見習い兵士が来た。


「た、大変です!敵軍が攻めてきています。」
「どのようにして。」
「ディルダ国以外の寄せ集めの軍隊ですが、怒りや恐れから集まった隊達なので・・・。」

思いの強さ、というわけか。

「あなた達は王さまの命令に従うべきじゃないの?」
「それが・・・国王はミルバの軍の殆どをマーカロニオに向かわせているのです。」
この期に及んで、国の存続よりもティアラを求めると言うのか。

そこまで考えてあの王の執念深さとティアラの力を思い出した。
万物にも勝る力。強さ。
全ての人がひれ伏すと言う、ティアラの強さ。
国を奪われてもそのティアラさえ手に入れてしまえば、強い軍隊など幾らでも作れるし取り返せる、と言うこと?
それに竜王を丸め込む話術を持つのはこの王なのだ。
必要とあれば、また同じ手で竜王のミルバ軍を作ることが出来るだろう。



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