雪解けの水に潜む、紅



私は、ドラゴンが大好き・・・。


『愛してる、シルビア。見守っているよ。』
それっきりディモンドの声は聞こえなくなった。


今まで微かに感じていた、彼の息遣いや確かに動く鼓動をもう感じることはない。
どれくらい踊っていただろうか、ようやっと足が止まり力尽きたように崩れ落ちる。

目の前にあるディモンドの安らかな寝顔に手を伸ばして触れる。

鼻の上を擽っても、身動ぎもしない。

息遣いもない。時折する身震いもない。

薄らと開いた口から炎が吐き出されることも、もうないのだろう。

頬を伝う涙が、乾いた地面に落ちて吸い込まれていった。




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