雪解けの水に潜む、紅



驚きに目を見開き、感嘆の溜息を吐く人もいる。
「十三年よ。十三年もの間、私は母国の助けを待っていた。だけど、戦争が起こるまで助けは来なかった。今となってはどうでもいいの。私は国王様の為に・・・。」
迫真の演技だったと思う。
可哀想だと涙を流した老婦人が私を見る。
その瞳には微かな恐怖が浮かんでいた。
「DD。」
私の掛け声と共にDDは元のドラゴンの姿に戻った。
「竜王は私の味方だ。」
DDに近づくと彼は私の頭を撫でてくれた。
平和は大事だ。
だけどその平和を齎すには、ここを突破する必要がある。
「そこを通してくれ。私は先に進まなければいけない。」
「戦争に行くつもりか!」
「・・・国王が、そう望むなら。」


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