Dead Flower
―version―



とある、学校で起きた事件の物語。

これは、ある少女を中心に起きてしまった出来事である。

そう、あれは確か…、いつだったか忘れてしまったが、桜の咲くころだったかな?

その日、彼女は…――――――



私の名前は河原 美菜。
花崎中2年5組。
一応、クラスの学級委員。

至って普通と思われる中2の女子である。


でも、クラスではあることが絶えず、続いていた。






「ねぇ、土曜日…、由紀が………!」

「え?…嘘、でしょ?」

「そんな…っ、由紀まで…!」

「これで………、」

「……6人目、だっけ…」

「……う…、もう…やだ……っ」

女子生徒が口々に話をしている。







このクラス、2年5組ではある少女が、人を、……クラスメートを殺している。

その犯人は……。



福田琴音。
ミディアムまで伸びた髪をおろした、可愛らしい顔立ちの女の子である。

ある日を境に彼女は急変し、それ以来彼女に近づく者はいないに等しい。


私たちは彼女に恨まれているのだ。
憎まれているのだ。

彼女は、また私たちの友達を殺した。


土曜日、クラスメート飯田 由紀が死亡した。

川に亡くなった血まみれの遺体が流れていたらしい。


そりゃそうだ。
もう決まっている。

だって由紀の机には、アレ、が置いてあったから。


クラスはすすり泣きと恐怖の声で溢れていた。

「…美菜ぁ……っ」

隣でひとりの女子生徒が私を呼んだ。
無言で振り返る。

「…私たちも、もう……」

「…紗英、私たちは、アイツに恨まれている。
もう、他に道はない」

「…ひっ…!」

恐怖に顔を歪ませ、涙を流す紗英。

「……大丈夫よ。
怖いものなんかないから…」


何が怖いものなんかない、だ。

死ぬのが怖くないわけないだろう。

私もいずれ……、死ぬ。

呪われているのだ、私たちは、逃れることはできない。

彼女は、私たちを許さないから。

私は、学級委員だから、なるべく強く意思を持とうと心掛けている。

が、本当は怖くて仕方がないのだ。

自分が死ぬ、と考えると恐怖でいっぱいになる。

でも、友達を少しでも恐怖から救うため、みんなを励まし続ける。


それしか、できない。

彼女は、誰も知らぬ間にターゲットだけを消していった。

いつ、どのようにしているのかは、誰も知らない。

だから、怖い。


そして、消される人はその前にお告げが置いてあること。

それが、サインである。


ハーフアップに縛るためのリボンが風に揺れた。

自分はただ、いつ訪れるかわからない死を、怯えながら待つしかないのだ。



ある日、彼女が動き出しました。






〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


朝の学校は静かでちょっと好きだ。

教室から見える日もいいし。


いつも通りの環境。

でも、この時間が、一番怖いかもしれない。


教室の前に立ち、ドアに手をかける。


「おはよー」

と、挨拶をした直後、異変に気づいた。

「……紗英?」

紗英が、机の下にうずくまっている。

「ちょっと、紗英?」

呼びながらそっと駆け寄る。

「…美菜……、う…っ…」

横にかがむと、紗英は涙でいっぱいの顔をこちらに向けた。

「ど、どうしたの!?」

紗英はボロボロと涙を零し、「これ……」と、手を出した。

「…っ!!」


なんということだ。

彼女の手には、緑色の植物が握られていた。

―――……パセリだった。


「…今朝、来た…、ときに……、私の机に……っく」

紗英は泣きながら、私の腕を掴む。

「……ねぇ…っ、」

紗英は私の目を、不安そうな表情で見つめる。

「……私、死ぬの…?」

「……ッ!」

………。

何も、言えなかった。








―――……3日後、紗英は、…………亡くなった。












怖い。

私のすぐそばの人が、こんなにも呆気なく消えていく。

怖い。

きっと、もうすぐ私も殺されるのだ。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


「美菜ちゃん」

名前を呼ばれて、ぞわっと寒気がした。

恐る恐る振り返ると………、

琴音が立っていた。

「――――……ッ!!!」

全身に身の毛がよだつ。


「…?、どうか、した?」

可愛らしい笑顔で訊かれ、我に帰る。

彼女が、彼女が紗英を、コロシタ。


「……あ…」

「…紗英ちゃん、……残念だったね…」

は?
残念だったね、だ?
お前が、殺したんだろう?

琴音は涙目で言う。

「……はあ、本当に残念!」



琴音は、急に態度を変え、「ニィ」と怪しげに笑った。

「……!?」

「…ふふふ。次は誰の番だろうね?…美菜ちゃんとかぁ?」


顔を近づけてくる琴音。
ゾッとする。

「……じゃ、また明日ね」

それだけ言うと、琴音は去っていった。



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