上司と上手につきあう方法【完結】

ちなみに彼への返事は『ノー』

抱きしめられた時は、思わぬ展開に思考回路がショート寸前で。何も考えられなくて言葉につまってしまったのだけれど、少し冷静になれば『ノー』というのが当然だ。それ以外にない。


朝陽は私の言葉を聞いて、

「まぁ、当然だよね」

と笑い、抱きしめていた腕を緩めてくれた。


それから私は逃げるように朝陽のマンションを出て、それから二人きりではまったく会っていない。


もちろん同じ会社で働いているわけだから、顔だって合せるし、仲のいい伴ちゃんが朝陽とチームを組んでいるのでまるっきり無視していたわけではないけれど……。



「そういえばさー、そろそろ社員旅行の時期じゃない? 今年どこになるんだろうね」

「あー……そうだっけ……」



紗江子に言われて、デスクの上の置き型カレンダーを見つめる私。


ダブルベリーは社内イベントがさかんな会社で、春はお花見やイチゴ狩り、夏はバーベキュー、さらに年に数回、一泊二日の泊りがけでの旅行があるのだ。

費用は全額会社もちという太っ腹加減なので、私と紗江子は入社してから皆勤賞と言っていいくらいこの手のイベントに参加していた。
(彼氏もいないし!)






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