片恋
全く住人がいないのなら、上に行っても逃げ場がなくなるだけだ。
ちょっと、、休憩・・・。
目を閉じて、少しでも呼吸が整うのを待つ。
冷たい床とドアが、今は心地よかった。
「琴子ちゃんと亮介が、一緒にいられるように」
そこに込められた想いに、きっと遼平君は気づいていない。
遼平君はやさしいけど、
本当に、自分のことに無頓着だ。
でもだからこそ、
私がお願いすれば聞いてくれるはずだ。
遼平君を、引き止めなくちゃ。
「ひとり」になんてさせない。
私がいなくちゃ、だめなんだ――
だって私は、覚えている。
あの時すでに、わかっていた。
冷たい手すり。
コンクリートの階段。
立ち尽くす、梶君と母。
「・・・遼平君・・・どうして、ここにいるの」
その言葉に、ちいさな遼平君が立ちすくむ。
言っても母は信じなかったと思うけれど、
遼平君はひとりでここを探し出して、
ひとりでここに来たのだ。
大人になんて、言うわけがない。
私にはわかっていた。
遼平君は、遊びに来たんじゃない。
私に会いに来たわけでもない。
一緒に行きたかったのだ、私たちと。
誰にも見つからない場所を探していた私たちと、一緒に。