片恋



「詳しい事は
 知らないけど。

亮介がそれでいいって言うんなら、
私は何も、言わないよ。」

珍しく屋上へ続くドアが開いていて、

もしかしてとのぞいてみたら、
端の手すりに寄りかかって、亮介がいた。

亮介は黙ったまま、
振り返ってこちらを見ている。

「・・・それで、そのオトモダチとは
仲良くやれてるの?」

「・・・」

ぷいっとまた景色に目を向ける亮介に、
思わず溜息が出た。


「・・・ばかだねー。
その子だって、とっさに亮介の名前出しちゃっただけでしょうに。
罰が軽くなるかなーって。

亮介が黙って処分された事で、
かえって気まずくなっちゃったんでしょう?

他の子ともギクシャクしちゃって・・・。」

よくは見えないけれど、
こちらに背を向けた亮介は

小さく笑ったようだった。


「いいの?それでも。」

いつまで待っても、
その背中が答える事はない。

肩越しに、
沈んでいく夕日が見えた。

私はわざとらしく溜息をつくと、
もっともらしくフザけて言った。

「亮介って、昔から要領よく見えて、
時々肝心な所でミアヤまるよねー。」

見誤る、と言おうとして、
うまく言えなかったのをごまかして笑う。

あまり耳慣れない言葉を
時々使う亮介に張り合って、

普段からこうやって
お互いに憎まれ口を言い合っていた。

挨拶みたいなものだ。

だけどその言葉に
本気でイヤそうな顔をして、
亮介が振り向いた。

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