片恋
「やめろよ、そういう言い方。
・・・遼平じゃあるまいし。」
「遼平君は、別に・・・。」
そんな風に言ったりはしないと思うけど。
という言葉を飲み込んで、
やっとこっちを向いた瞳に、
私は急いで言葉をつなぐ。
ほんとはヒト一倍寂しがりの亮介が、
今の状況でつらくないわけがない。
「せめて事情を知らない子達とは
仲直りしときなさいよ。
・・・引いてたよー?お友達。(笑)」
私の笑顔につられたように、
亮介が片頬を持ち上げる。
「俺は別に。
今だって簡単に、他のトモダチ作れるし。
現金ヒラヒラさせればいいんだもん。」
「亮介。」
ふざけて笑う亮介を、真顔でみつめた。
一緒に笑ってなんかあげない。
くだらなすぎて、
怒ってなんか、あげない。
ふっと、いびつな笑いを消して
亮介が黙り込んだ。
そのまま私と向き合いながら、
私の存在をまるごと忘れたみたいに無視をする。
私を透かして、
背後の壁も透かして、
どこか遠くに視線を向ける。
暫くにらんでみたけれど、
亮介の強情に張り合うのを諦めた私は、
くるりと背を向けて、屋上をあとにした。
刺すように強い視線を背中に感じながら、
踏みしめるようにして階段を下りる。
自分の言葉が、
しきりに頭の中でループしていた。
『時々、肝心な所で見誤る』
亮介が校内で暴力事件を起こしたのは、
その翌日だった。