天使みたいな死神に、恋をした

「はい、どなたさま? 何かご用でしょうか?」とドアを開けると、黒こげになったどろどろに溶けた人のような物体が口元を汚く緩めてヌラリと私に手を伸ばしてきた。

 肉が焦げたような、腐ったような、好ましくない臭いが鼻につき、体が勝手に後ろに退いた。
 
 ひきずるように体をもそらせ家の中に腕が入った瞬間、

 黒こげの身体に斜めに銀色の線がしゅぱっと入り、動きが一瞬止まった。
 
 私を捉えようと家の中に入ろうとしていた腕は家の中に入った瞬間に煙のようにじゅわりと消え、

 銀色の線が入ったところから体が真っ二つに割れて、ぐにゃっと崩れ落ちた。


「うっそー、きもっ。おえ」


 口元を手で覆いながら崩れ落ちた残りの残骸を確認しようと外を覗こうとすると、

 その後ろに真っ黒いフードを被った同じようなのがもう一匹……


 いや、もう一体……

< 161 / 262 >

この作品をシェア

pagetop