葉桜~late spring days
 「いたたたたた」
 「どーだどーだ痛いだろー」
 「いたい」
 「あの時、私も痛かったけど、ほっとしたんだ。」

 たまには、逆の立場になれたらいいんだけれども、どうすればそういう存在になれるか、よく分からない。でも、あの時、もう何もかもやめて逃げたいと思った時 みたいに、奏太が辛いとき、心を緩めることができたら、そういう存在になれたらと思っている、ということを伝えたかった。

 …もう少し、話したい。とりあえず、仕切り直したい。

 「トイレ行ってきていい?お寺さんで借りれるかな?」
 「たぶん大丈夫だと思うけど。」
 「ごめん、ちょっと待ってて。」

トイレに行くふりをして、こっそり奏太の様子を遠くから眺めてみた。昨日より、ちょっとはラクになったのか、真顔だけど、少しだけ柔らかい顔をしている、ような気がした。気がしただけであって、違う可能性も高いけど。

のども渇いたので、バスから降りた時に見かけた自販機へ行き、お茶を2本買って、もう一度奏太の様子をみた。
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