葉桜~late spring days
 仲間という言葉がもどかしい。

 晴香の気持ちは、泰一郎の言うとおりなのは分かっていた。

 恋愛感情を排除して考えているということは、普段から見ていてよく分かっていた。それでも、自分の中に湧いてくる好きという感情を、無理やり止めることなんてできなかった。

 ただ、仲間でありそれ以上ではないことを、晴香本人から目の前に提示されると、僕にとってはもどかしくて言葉に詰まった。

 それ以上に、もう一歩前に進めないだろうか、僕たち。

 拒絶されるかもしれないこと、距離が離れてしまうかもしれないこと、実は誰か好きな人がいるのかもしれない、そんなことが一瞬頭をよぎった。

 泰一郎の言葉がふと浮かんだ。

 「腹くくって、玉砕すりゃいいじゃん。」

 沈黙に耐えかねたのか、晴香が気恥ずかしそうにベンチを立とうとしていた。

 僕は晴香を抱きしめた。
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