葉桜~late spring days
 その言葉に、うろたえた。でも続きの言葉を聞いて、やっぱりという気持ちになった。

 「奏太、ごめん、分からないの。どうしたらいいか、自分がどういう気持ちか。ごめん。」

 そうだよな、急に抱きしめられて、想定してないこと言われたら、誰だってそうなる。晴香のことだから、なおさら、混乱してしまっただろう。

 右腕を解いて、頭をそっとなでて、晴香から離れた。

 「答えは急がないから。ゆっくり考えて。

  これは僕のわがままだけど、いいかな。
  このまま気まずくなって楽器やめて、部活辞めたりとかしないでほしい。
  僕は誰よりも一番、晴香の音が好きだから。
  仲間として誰よりも信頼しているから。
  ものすごくわがままなこと言ってるって分かってる。
  でもさ、仲間である前提は変わらない。

  仲間からもう一歩進みたい。そう思ってるから。」

 晴香は黙ってうなずいた。

 「ありがとう。」

 うなずいて、そのままうつむいてしまった。

 「腹減ったな。昼飯行くか。」

 うつむいていた晴香の手を取って、バス停に向かった。
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