黄昏に香る音色
次の日学校が終わると、
明日香は、まっすぐに、

音楽を教えてもらっている恵子の店へと、急いだ。

もう日が、落ちるのが早い。

短くなった夕焼けに、照らされながら、

電車を乗り継いで、kkへと着いた。

七時開店のため、クローズとなっている扉を開けると、

笑顔の恵子が、迎えてくれる。

「おはよう。明日香ちゃん…と、里美ちゃん」

「おはよう!ママ」

里美が、元気よく挨拶する。

そう…なぜか最近、よく付いてくるのだ。

いつものように、恵子はコーヒーをいれてくれる。

里美は一口飲むと、

「ママのコーヒーって、ほんとおいしい!」

「あら。里美ちゃんは、いつもお上手ね。うそでも嬉しいわ」

「あたし…うそはつけないんですよ。だから、男にもだまされるし」

里美は笑う。

(笑えない…)

「奇遇ね。あたしもそうなのよ」

恵子も笑う。

さらに笑えない。

笑いあう二人。

明日香は、無理矢理咳払いすると、話題をかえた。

「ママ」

真剣な明日香の声のトーンに、

恵子は、笑うのをやめた。
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