黄昏に香る音色
心の裏を、触れてほしい
あまりにも、静かな音。

無音すらも、

音が、なっているように感じる。

この歌は、

絶望だけじゃない。

明日香は、驚いた。

嬉しさがある。

フューチャー…未来という名の曲。

理恵にとっての未来とは…。

ジャケットを手に取る。

カバーばかりの曲の中、

この曲だけが、

オリジナルだ。

理恵が書いたオリジナルナンバー。


曲が終わる。



自然と涙が、頬を伝う。

先ほどとは、違う涙。

この未来は、

理恵の未来じゃない。

啓介のことだ。

でも、

どうして…嬉しいのに、悲しいのだろうか。

どうして啓介を残して、自殺したのだろうか。

明日香には、わからなかった。

たぶん、

一生わからない。

わからなくていい。

明日香は決めた。

あたしは、理恵とは違う歌を歌う。

あたしは、涙なんか流れない歌を歌う。

たとえ…

悲しくて切なくても、

こんな涙は、流さない。
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