黄昏に香る音色
「あなたが…うちの部員だったね」

結城は、ニヤリと笑い、

「我がブラスバンドは!いつも、優秀な人材を募集中!あなたがー」

明日香をまた指差し、

「我がブラスバンド部員だったら!何の問題にもならないわ」

満面の笑みで、結城はさらに顔を、明日香に近づける。

たじろぐ明日香。



「待ちなさい!」

階段のさらに上から、声がした。

颯爽と登場したのは、

軽音部副部長、浅倉だ。

右手に、トランペットを持っている。

「お探しのは、これね。昨日、うちの部員が拾って、保管してたの。今ちょうど、届けにいこうとしてたところよ」

「うそおっしゃい!」

結城は苦々しく、浅倉を見上げ、睨み付けた。

「あらあ。感謝されることはあっても、文句をいわれる筋合いはないわ」

階段を降りてきた浅倉と

結城が、至近距離で睨み合う。

その隙に…

明日香は、階段を降りた。

そして、

気づかれないように、

その場を全力で、後にした。

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