黄昏に香る音色
明日香は久々に、渡り廊下に来た。

少し風が強い。

でも、頬を撫でる風が、

何だか優しい。

少し沈みかけている夕陽に向かって、背伸びし、

敬礼した。

本当に久しぶりだ。

いつもの定位置だった場所…手摺りに寄りかかる。

隣を向いて、誰もいないけど、

微笑んだ。


(ただいま)

自然と、鼻歌を口ずさむ。

Someday My Prince Will Come〜いつか王子様が。

今の明日香の練習曲。


渡り廊下から、北館にある音楽室が見えた。

里美が、ドラムに座って叩いている。

一生懸命に。

こんなところから見えるなんて、知らなかった。

いつも、夕陽とグラウンドだけを見ていた。

夕陽が、半分くらい沈んでいる。

もう音楽室に、いけるだろう。


明日香が、

手摺りから離れようとした瞬間、

グラウンドからの階段を、上がってくる人物がいた。



高橋だ。
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