黄昏に香る音色
kkの練習を終え、

明日香は、電車を乗り継ぎ、帰途についていた。

軽やかな演奏。

明日香の目標ができた。

それも1人ではなく、みんなとである。

楽しくて、スキップをしながら、

明日香は、駅を出た。

自転車置き場まで、商店街を歩く。

電気店の店頭の液晶テレビから、

CMが流れてきた。

口紅のCM。

明日香の足がとまった。

なんて…軽やかな歌声。

明日香は、震えた。


この声は…。

知っている。

(この声は…)

明日香は、胸を握り締めた。

(和美さん!)

明日香は、CMが終わっても、動けなかった。

衝撃が、背筋を貫き、

まるで、杭を打たれたように、明日香はその場に立ち尽くした。



しばらくして、気付いたときには、

走っていた。

自転車置き場まで走り、

胸を押さえた。

激しく息をする。


(また逃げた…)

あたしは、あの人の歌から。

この前は、そばに恵子たちがいたから、

耐えれた。

あたしは…。


あの人は天才。

あたしは、あの人には勝てない。

絶対に。


明日香は、崩れ落ちた。


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