黄昏に香る音色
未来の歌詞は、他愛もないものだった。

家族の為に、買い物をして、料理をし、子供とともにいて、

成長を見守ること。

普通の生活。

しかし、それこそが理恵の未来だった。

望みだったのだ。

彼女が捨てた幸せこそが、

未来だった…。


明日香は、CDをそっと、ケースに戻す。

また…エリス・レジーナのアルバムをかけ、

目を閉じた。

明日香は、思った。

音楽には、いろんな思いが込められていることを。

今までは、漠然としか…気付いてなかった。

友達とたまに、カラオケにいったり、歌番組は見ていたけど。


あたしの歌には、何があるんだろう。

多分…あたしの音は、しゃぼん玉。

ふわふわ飛んでいくけど、

中身のない…すぐに壊れてしまう。

翼がほしい。

暖かい翼。

理恵の未来を、包める暖かさ。

(あたしは!)


明日香はもう一度、理恵のアルバムをセットし、

未来と向き合った。

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