ヒミツの恋【短編集】
どれくらいそうしてたんだろう…





引き返す足音も聞こえず、無事逃げ延びたと安堵したのか、渉は深いため息を吐いて私を見た。





『助かったよ。ありがとう。』






「い、いえ!私は別に何も…」






私はただ図書室にいただけで、何もしていない。






『嫌じゃなければ、そこで少し休んでいっても、いいかな?』





指差す先は窓側に置いてあるテーブルと椅子だった。





「ど、どうぞ!!」






『ありがとう。』






渉は目を細めて笑いかけてくれた。





私はこうして渉と話す機会があることにただ驚くだけだった。






カウンターで本を読むフリをしながら椅子に座る渉の後ろ姿を見ていた。





夕日が差し込む席に座って外を眺める渉の姿は、一枚の絵の様。




日に透けた髪がとてもキラキラに見えるんだと初めて知った日だった。
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