あの加藤とあの課長
泣き止んだ私は生渕さんのスウェットに着替えると、顔だけ洗った。

(化粧の崩れ方ひどかった…。)


生渕さんに招かれて布団に潜り込むと、生渕さんは私の顔を見て小さく笑った。



「目赤いな…。鼻まで赤いし。」

「い、言わないでください!」



昔から泣いた後は絶対にそうなんだ。私はそれが恥ずかしくて堪らなくて…。



「ふ、可愛い。」

「っ…。」



私…こんなにピュアじゃなかったはずなのに…。いつからこんな…。

赤いであろう顔を隠そうと生渕さんの胸に顔を埋めると、生渕さんの匂いがしてなんだか落ち着いた。


ううん、きっと、相手が生渕さんだから…駄目なんだろうなあ…。



「もう、こんな思いはしたくないな…。」

「…えへへ、気を付けます。それに、今度からは、ちゃんと言います。」



生渕さんに心配かけまいと言わなかったけれど、言わない方が生渕さんへのダメージは大きいようだから。

だから、今度からはちゃんと言おう。



「そうしてくれ。」



さっきみたいな生渕さんは、もう見たくないから…。


そんな私の思いは、後に大きく裏切られることを、まだ、誰も知らない。
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