あの加藤とあの課長
「今回はいつにも増してすごかったな…。」



家に帰ってぐったりした様子の源がソファに座って溜め息を吐いた。

もらった花束を花瓶に生けた私はその隣にそっと腰かけた。


中途半端な酔いはすでに冷めてしまった。



「そういえばさ、晋ちゃんって増田ちゃんと帰ったよね。」

「あぁ…、そういえば。」



新しい恋の予感に、少し頬を緩めた。


甘えたように源に擦り寄ると、私の肩に腕を回してそれを受け入れてくれる。

それをいいことに、源の肩口に顔を押し当てた。



「酔いは冷めたかと思ったんだが。」

「…嫌?」

「そんなことはない。」



そう微笑んでくれたのをいいことに、今度は源の腰に腕を回した。



「あんまりそうしてると、抑えが効かなくなる。」

「酔ったの?」

「……かもな。」



小さく笑って、源は私の後頭部に手を回すと、そのまま私の顔を引き寄せた。

確かめるようなキスを繰り返して、源はふと思い付いたように言った。



「明日、たまには出掛けるか。」



そういえば、源とは出掛けた記憶がない。


前のデートはストーカー事件のおかげで流れちゃったし。

ご飯の買い出しとか、ちょっとコンビニまでとか、会社の飲み会とか、出張とか…。


……どんだけ仕事人間。



「…うん、絶対出掛ける。」



少し反省しながらそう言うと、源は「よし」と頷いてからキスを再開した。
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