あの加藤とあの課長
「お前なぁ…。」

「かちょ…。」



腰にしっかりと回された腕が呆れているような、怒っているような。



「酔っ払いは放っておけないな…。」



なんて、仕事の時の表情を大して崩さず言う。



「そういえば、2人って付き合ってるんですよね?」



そう言ったのは私よりも若い男性社員だった。

直接的な言葉で触れてきた人が誰もいない中のその発言は、周囲を凍りつかせた。


どうするんだろうと、酔ってボーッとした頭で考えていると、源は何も気にせず「あぁ」と一言。

落胆の声が聞こえる気がするのは気のせいだろうか。



「なーに言ってんのよ、この2人なんて付き合ってるどころか同棲中よ?」



敏ちゃんの言葉に、息を飲むのが聞こえたのは気のせいじゃない。



「俺加藤さん狙いだったのに…。」

「俺もー。1度くらいチャンスあるかなって。」

「私生渕課長狙いだったー!」



なんて声がチラホラ。

キョトンとして源を見ると、そんな私に柔らかく笑いかけた。



「言ってよかったのかな…こんな堂々と…。」

「今まで仕事に支障は出ていないし、何よりお前は出向になるからな。」



それもそっか…。

そんな私たちを見てまた悲鳴が上がるのを、今度は聞こえない振りをした。
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