あの加藤とあの課長
出社すると、老若男女、おまけに部署まで関係なく挨拶される。

もはや顔すら知らないような人にまで。



「おっはよー、陽萌、直人!」



後ろからの声に振り向けば、いつもと何ら変わらぬ彼の姿があった。



「おはよ、晋ちゃん!」

「はよ、晋三。」



晋ちゃんこと今泉 晋三(いまいずみ しんぞう)は、私たちの同期。これまた私の2つ上。

人懐っこい笑顔の彼は、女性社員から密かな人気を集めている。


3人でエレベーターに乗り込むと、私たちは3階、直人は6階を押した。



「じゃあね、直人。」

「また昼予定が合ったらねー!」



目的の階で降りて、閉まるドアに向かって私と晋ちゃんが言うと、中の直人は「あぁ」とだけ言った。


私と晋ちゃんは営業部、直人は商品企画部に所属している。

研修期間に知り合った私たちは予定が合えば一緒に昼食を摂っていた。



「さてと、行きますか!」



閉じたエレベーターのドアをボーッと眺めていた私を晋ちゃんが促した。

晋ちゃんと2人してオフィスのドアを潜ると、またも挨拶が飛び交う。


それに笑顔で応えて自分のデスクへと向かった。
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