あの加藤とあの課長
バスを降りると、夏の日差しがきつかった。

目の上を手で覆いながら辺りを見渡す私は、懐かしい顔ぶれを早速発見した。



「あ…。」



そう声を漏らしたものの、向こうに届くはずもなく。



「荷物置きに行くで~!」



そう言う部長の声に従う他なかった。

どうせホテルなんかは一緒なんだから、別に焦ることはない。


そう気を取り直してホテルへと向かった。


さっき見かけたのは増田ちゃんや晋ちゃん、煌と敏ちゃんだった。

(あ、れ…?)


キャリーを引きながらロビーへと向かっていた足をハタと止めた。



「どないしたん?」



少し前を歩いていた恵也がそれに気付いて振り返る。

「何でもない」と返して、私は恵也の元へと駆け寄った。


足りなかった。
源が、いなかった。

きっと群れでもできているだろうと踏んでいたのに。


(どうして…?)

首を傾げてみるも、その答えはもちろん分からないままだった。



「加藤さん、私とです。」



そう言ってホテルのキーをチラつかせたのは、私の髪を切ったあの社員。



「あ、うん。」



適当に返事をして、恵也と別れて部屋へと向かった。
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