あの加藤とあの課長
「ええですねー、眺め最高!」



ホテルは全部屋がオーシャンビューで、部屋からの眺めが最高だった。



「高山課長って1人部屋でしたっけ。」

「そうだね、課長だし、普通なら。」

「夜這いでもしに行こかな。」



そう言う彼女と、顔を見合わせて笑った。

恵也は他の男性社員と同室だと言っていた。



「さて、準備準備ー♪」



ご機嫌に言いながら、彼女はキャリーケースの中を漁り始める。

そうして掴みだしたのは水着。
彼女によく似合いそうな濃いピンクのものだ。



「先に着替えますね。」

「うん。」



先に着替えるために脱衣場に入った彼女を横目に、私も水着を探した。


これから夕飯まで自由時間。
大半の人は海に行く。

かくいう私も、ロビーで恵也と待ち合わせだ。



「っ…。」



また、背中の傷が疼いた。

増田ちゃんとの一件以来、疼く頻度が格段に増えた。



「忘れてた…。」



私、ビキニ駄目じゃん。

当然のようにビキニを持って来てしまったけれど、こんな傷を晒すわけにもいかない。


薄手のパーカーを持って来て正解だったなと自分を少し褒めた。
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