あの加藤とあの課長
『今どこにいる?』

「え? お、大阪駅の新幹線のホーム…。」



予想外の問いに首を傾げた私の肩を、恵也が叩く。

恵也を見ると、そこには呆れたように笑う恵也がいるもんだから、尚更私は首を傾げた。


あっちあっちと恵也が指差す方を向いて、私は驚きのあまり、ケータイを落としそうになった。



「『迎えに来た。』」



耳元で聞こえる声が、目の前からも聞こえる。

ケータイを耳から離すと、ジーンズのポケットに仕舞う。



「な、なんで…。」



ケータイを少し耳から離したものの、呆然としていて動くことができない。

だって、目の前にいる。



「これ。」



ピッと取り出したのは、往復分の新幹線の切符。



「……何やってんの…。」

「迎えに来ようと思って。金使わないもんだから貯まってんだよ。」



嬉しい反面、恥ずかしくなって、両手で顔を覆った。



「…もう、馬鹿。」

「何とでも言え。」



いつの間にか目の前に来ていた源は、不敵に笑って私を見下ろした。



「あの生渕さんがねぇ…。」



ニヤニヤと笑う恵也に、私は小さくなることしかできなかった。
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