あの加藤とあの課長
駅の駐車場に車が停まる。


「ありがとう。」

そう言おうとしたのに、至極当然のように車を降り始めた恵也に驚く。



「恵也?」

「ここまで来たんやし、最後まで見送らせて。な?」



そう言う恵也に、小さく頷いた。

私が頷いたのを確認すると、満足そうに笑った恵也。


入場券を買った恵也は、私の後に続いて改札を潜る。


エスカレーターを上がってホームに出ると、夏らしいモアッとした風が頬を撫でた。

丁度新幹線がホームに滑り込んできたところだった。



「生渕さんとは向こうで待ち合わせか?」

「うん。」



車で迎えに来ると聞かなかった源を、やっとの思いで説き伏せた。

今日が土曜日で明日が休みとはいえ、無理は良くない。


あれから一月、結局源は課長補佐なしを貫き通したらしいから、相当疲れてるはず。


その時、ケータイが着信を知らせた。



「電話か?」

「うん。」

「俺は気にせんといて。」



そう言って、電話に出るよう促す。

相手を確認すれば、そこに表示された名前に顔が綻んだ。



「もしもし?」

『陽萌。』



耳元で聞こえるその声に、心臓が騒がしくなる。
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