あの加藤とあの課長
「遅かれ早かれ行こうと思ってた。」

「そ、そうなんですか…?」

「いつまでも部下を取られていては困る。」



膝の上で頬杖をつきながらそう言った。

その姿がまた様になっていて、私の胸は高鳴るばかり。


(…高鳴る?)



「加藤。」

「は、はい。」

「明後日の朝一番、ミナトさんの所だ。」

「はい。」

「それで、終わりだ。」



課長の言う終わりって、どういう意味なんだろうか。私には分からないけれど。

課長が言うんだから、それでいいんだろう。



「あの、ありがとうございました。」



布団で口許を隠しながら言うと、課長は穏やかに笑った。

久しぶりに見た…。



「お前が大丈夫なら、それでいい。」



あー、もう。
なんでそうなんですか、課長。


その胸に飛び込みたいなんて、その腕に抱き締めてほしいなんて。

可笑しなこと考えちゃうんで、止めてください。



「…陽萌。」



課長の手が優しく頭に触れる。



「か、ちょ…。」



涙が溢れてくる。

何、これ。
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