あの加藤とあの課長
敏ちゃんの宣言通り、やたらと廊下で噂されるようになってしまった。

もはや指差されてるんですけど。



「へぇえー、まったく、課長さんたら何しちゃったわけ?」



コーヒーを啜りながら湊が課長に尋ねた。課長は肩をすくめるだけ。

あれから2日が経つが、実は私もかなり気になってる。



「なんでもいいが、今後はあまり俺の部下を取らないでくれ。」

「うーん、行き詰まったときくらいにしておくね♪」

「できればそれも止めてほしいが…。」

「えええー、俺、そこは譲れない。」



なんだかよく分からないけれど…、打ち解けてしまったらしい。



「あの、課長。」

「なんだ。」

「湊って、男版敏ちゃんって感じしません?」

「……なるほど。」



確かに、と頷く。
湊はそれに首を傾げているけれど。



「そろそろ失礼する。仕事がある。」



立ち上がった課長に続いて立ち上がると、湊がニヤリと笑った。



「ね、陽萌。」

「何?」



玄関扉の外側に立ち、社用車に乗り込んだ課長を眺めながら湊が言った。



「今度の男、面白いじゃん。」

「…うん。」



微笑み返すと、湊は困ったように眉を下げた。



「加藤!」

「はい、今行きます! ではまた、ミナトさん。」



私は湊に背を向けて、急いで車に乗り込んだ。
< 88 / 474 >

この作品をシェア

pagetop