王に愛された女 番外編





 カイルは羽ペンをインク壺に入れ、銀髪を掻きむしった。

「なんなんだよ、この感覚は!!」

 初めてだった。

 女は嫌いなのに、あの少女のことだけが頭から離れない。

「…俺、どうかしちまったのかよ…」

 カイルは顔を上げ、ロッドを見た。

「な、何でしょう王子様」

「俺、頭がおかしくなっちまった」

 カイルが訴えると、ロッドは小さく笑った。

 彼の笑い声にカイルはムッとした。

「チッ」

「すみません、王子様が勘違いしていらしたので」

 ロッドが慌てふためいて言い訳をする。

「…勘違いだと?」

「はい。王子様は頭がおかしくなったのではありません」

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