誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「そなた、妾の申し出が聞けぬと言うのか?」
「そういうわけでは…他の者ならば喜んで受け入れるのですが」
「カミーユならば満足しよう」
それはもう。
嬉々として近藤達としている稽古試合に組み込むだろう。
諜報役ではあるが、貴婦人の騎士でもあるファントムはこう見えて腕がたつ。
あぁ、第三課がまた変人の集まりに。
「では決まりじゃな」
「……………」
最悪だ。
奏は鷹の方にうんざりとした目を向けたが、鷹も同様だった。
「奏ちゃん、どうするの?」
沖田がこそっと耳元で囁いた。
「……………仕方ないですね。連れていきます」
奏はハァッと深い溜め息をもらした。
珍しく自分から隣の座っていた沖田にしなだれかかるくらいに疲れきっている。
思わぬ役得に、沖田の顔もニコニコだ。
それを見た珠樹はイラッとして、奏の腕をグイッと引っ張り、自分の方に来させた。
「奏、やれるのか?」
「……………当たり前です」
急に真面目な口振りになった貴婦人に、奏はスッと背筋を伸ばし答えた。
何が、と言われなくても分かるのは、悲しいことだ。
「そうか。ならばよい。忙しい中すまなかったな。もう戻るといい」
「はい」
奏は立ち上がり、一礼をした。
それに近藤達、それからファントムも倣った。
「あぁ、そなたら、奏を頼む。そして、人間を葬れるのもまた人間であるそなた達じゃ。それを努々忘れるな」
「分かりました」
「その言葉、しかと胸に刻んでおきます」
近藤と山南の言葉に、そしてそれに賛同するように頷いた土方達に満足そうに貴婦人は笑った。
その言葉の意味を知るのは、それからしばらくのことだった。